その一秒 スローモーション (That One Second Slow Motion)
長い長い下り坂
寝ぐせをつけたわたし
駆け足で転ばないように
間に合え いつものバス
息を切らせて走る
昨日の雨 水溜りをよけて
おろしたての靴を汚さないように
気をつけて跳んだ
あがる水しぶき、 波打つ雲
ぶつかる 振り向くキミ
スローモーション
落とすカバン 目が合う一瞬
ほんの一秒 永遠に続きそうな感覚
おもわずそらす視線の先にしょねれの靴
キミは無言 はっと我に返るワタシ
とっさに□をつく言葉
「ごめんあさい! 怒ってますよね」
早口で言えてない 逃げていい------?
「下向いて走るなよな」
めんどくさそうに言いながら
拾ってくれた 水浸しのカバン
ポケットに手を入れたまま
「ほら、ちゃんと持て」
差し出されて両手で受け取る
わたしの頭をポンと叩く
やられた 思考が止まる
スローモーション
衝撃が駆け抜けていく
ほっぺをつねる
落ち着いて------舞い上がらないで------
止まらないドキドキ
スピード上げる心臓の音
キミは歩く
思わず後ろからシャツを引っ張っていた
ひとすじの風 木の葉を揺らして
雨露が頭にパラリと降りかかる
ワタシは見上げる
まっすぐにキミの瞳を見る
これは恋なんですか
この気持ちに気がづかれないように
あわてて後ずさりしながら
「なんでもないです!」
まずい------ばれた------?
お願い 気が付かないで
スローモーション
耳まで赤く染まる どうしょう
怒らないで 早歩きで先に行かないで
あとを追いかける
停留所からバスが走っていく
「あーあ、遅刻------」
とっさに 「はい!」って元気よく返事した
うれしい