海はセメント
もうわずかだ
与えられた残り時間は
いつもより
殊更にいつもどおりでいるのさ
森のようで 都市のようで
それは滲んだ広告
靄を見下ろして 口を潤して
興奮が沈まるまで
さよなら 水に浮かべたトルソ
平気でいよう
カーテンの向こう 青く瞬く新宿
さよなら 水を憂かべたトルソ
平気でいよう
無闇やたらとあいさずにいてね
この不確かさを ...
石油ストーブの
懐かしい匂いがしている
災いがなんとなくやって来て
去るのを
翼ふるわせクククと笑う
サモトラケのニケ
そこに座って霞の先へ
弓を引いたまま やれやれ
さよなら 水に浮かべたトルソ
平気でいよう
カーテンの向こう 青く瞬く新宿
さよなら 水を憂かべたトルソ
平気でいよう
無闇やたらとあいさずにいてね
今という時間を
醒めてはじめてそれが
まぼろしと知るのさ
ああこれが去年なら
もうとっくに取り乱してた
さよなら 水に浮かべたトルソ
海は今日も明日もセメントの色
耳に手をあてて
雨を澄ませ
静けさに満ちた
この世界で
耳に手をあてて
雨を澄ませ
静けさに満ちたこの世界で