汽笛
Hatano Hirofumi
広い荒野に汽笛だけが響いている
夏にさまよう子供たちは今朝も
姿はみえなくても喧しい
羽根をひろいあつめ
数を数えよう 満たされるまで
足りたそばから失って
壊れてしまう
でも、それがどうしてだめなのさ
僕は今 手を伸ばすよ
欠けたこころにつかまって
わずかな君を取り留めたよ
君が産まれた春のテラス 獣の匂い
錯覚 織り成す魔法を
僕は信じている
いまでも
だせない答えに
笑えるのならあげるよ
帰りの切符を
でも、きみはひとりでいきなさい
はなうたを歌いながら
深い淵まで降りていけ
新しい君を取り戻すのさ
窓のこちらとむこうは朝と真夜中
荷物は捨てて
あせた光の下で
手紙をかいた 言葉のない
昨日の僕が姿を消す
明日 別人のような君が現われ
ついには
汽車が大きく揺れる
少し眠れば朝がくる
それですべては元通りさ