気球
波多野裕文
何千機もの気球が
ゆっくりと地上を離れていく
虹色の荒野
年老いたぼくらがいた
植物も思い出も
かたちをとどめないよ
ここは最後の国
ぼくらは孤独なアインシュタイン
互いの声 耳も貸さず
もうすぐおしまいだと
誰もが信じていたけど
ここはおじいちゃんと
おばあちゃんの国
それはただのながい幼年期みたい
トンネル抜ければ
そこはまた大きなトンネルのなか
いつから列は
ここでつっかえていたのか
眼を閉じ 耳を塞ぐ
誰かの温度も忘れた
迷走するボロい機械
それでも歯車は
チクタク回転している
金属の粉振りまいて
チクタク回転している
金属の粉振りまいて
チクタク回転している
眼を閉じ 耳を塞ぐ
ぼくらは孤独なアインシュタイン
震える夜の闇に
これは、はじまりかも
ただただ気配がしている
とっくに無視はできないよ
あなたは孤独なアインシュタイン
空想する春のマシン
これははじまりだよ!
ここは歴史のまんなかさ
ここは歴史のまんなかさ
チクタク回転している
ここは歴史のまんなかさ
チクタク回転している