海の原
正文 磯部
一葉万里の舟の道一帆の風微ぐ
海境残る雲梅染めの入り目
乱り心地はひだり悶ゆ心地でみぎり
か行きかく行き紛う
雲隠れの居待ち月
きっときっと睫を濡らして
如何と如何と押っ取り櫓を漕ぐよ
荒立つ五百重波打ち交う裏と表
面無き僻事上滑り攫う
浅瀬には徒波泡沫さざめいて
奥無き心絵潮先を過ぐす
あぁおいらかな舟の道
幾十許か後ろ影
また柑子色朝朗け憂き世の海の原
じっとじっと頬の川塞き敢げて
如何と如何と一向櫓を漕ぐよ
掻き霧らす事も掻き崩す事も
掻き曇る事も掻き消せたなら
見上げれば青波飛び交う青嵐
高行く空言旋毛風攫う
嫋やかな雲波耳欹てれば
青雲のささやき
要ず気はないか善知鳥を
打つ気はないか鯨魚を
夜を押さえ生い優れと
荒立つ五百重波打ち交う裏と表
面無き僻事上滑り攫う
浅瀬には徒波泡沫さざめいて
奥無き心絵潮先を過ぐす