一人一途
晴一 新藤
夜にはあなたに優しく解かれる
髪を一人一途に
結う朝にまで幸せは満ちていた
遠い記憶の底
私は息のできない魚を真似る様に
短い歌で唇を慰めていた
その音色が柔らかな泡になって
やがて空に届けばいい
冬にはあなたの頬の熱を感じた
指を一人一夜ながめる
だけの夏は凍える様で
ひとつまた溜息
私に世界の終りを選ばせるのなら
あの穏やかな絶頂の
日々にしたでしょう
ただ瞳に映るもの全部が
愛しくて泣けるほどだった
夜にはあなたに優しく解かれる
髪を一人一途に
結う朝にまで幸せは満ちていた
遠い記憶の底
一人一途せめて夢の中で
逢いに来て欲しいと願うの
幸福と絶望の明らかな境を
いともたやすく跳び越した
ふたりの過ちは今になって
許されてはいない