ゆうじのハンマー

BORO

町の助産婦所で
その夜 女の子が生まれ
ゆうじは家中の 金めの物は
すべて質屋へ 持って行き
それでも まだまだ 足りなかった
松山の兄の所へ
電話をしたが 断られ
ゆうじはドラムを 金に変え
バンドをやめて 職を探し そして
油にまみれて ハンマーを握る
当たり前だが
ゆうじは ゆり子を育て
町の工場で班長さんと
呼ばれはじめたが
町の物価は上がる
一方だったから
ゆうじ達は 裕福にはなれなかった
自然に湧き上がる
怒りを殺しながら
成長していく ゆり子を見ていた

あの結婚式の日の朝
ゆうじは ゆり子を見つめ
男の夢を オマエも一緒に
追いかけてやれと言った
苦しいけれど その方がいいと
ゆうじは何のために
働いてきたのかを知っている
自分のために ハンマーを握り
生きてきたということを......
油にまみれて ハンマーを握る
油にまみれて ハンマーを握る

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