私のヴァンサンカン

登紀子 加藤

こんな日があったことなど いつか
誰もが忘れてしまうだろう
もう二度と逢えるはずのない人の
淋しい横顔見つめていた
夢でも恋でもなく ただむやみに
自由だけがとりえのヴァンサンカン
息がつまるほどに抱きしめて
さよならの言葉でしか
言えなかった
音をたててこわれてゆく
むこうみずな夢たちよ
明日から先は闇の中
きしむ音だけが聞こえていた

思い出は哀しみさえ美しく
ほろ苦い甘さにそめあげる
淋しさが窓を打つ夜更に
冬の星のようにきらめいて
夢でも恋でもなく ただむやみに
自由だけがとりえのヴァンサンカン
なくしたものばかりに見えるけど
何もかもがいとおしい
私のヴァンサンカン

夢でも恋でもなく ただむやみに
自由だけがとりえのヴァンサンカン
なくしたものばかりに見えるけど
何もかもがいとおしい
私のヴァンサンカン

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